中国書画伝来の歴史的経緯-1

更新日:2019年03月01日
三館連合企画(左)と蝸盧美術館で開催された「呉昌碩展」パンンフレット
 昨年は呉昌碩(1844年9月12日〜192年11月29日)没後90周年ということもあり、東京国立博物館、台東区立書道博物館、朝倉彫塑館が三館連合企画として「呉昌碩展」を、福山書道美術館も同様に「呉昌碩の世界−印と書画−」を、そして大阪・蝸盧美術館では「世紀巨匠 永遠的大師 呉昌碩展」を開催しました。今号では呉昌碩の紹介はまたの機会に譲り、日本に伝来した中国書画の歴史的経緯についてお話ししたいと思います。
 中国書画の伝承についてその歴史は古く、まずは鎌倉時代にまでさかのぼります。この時代には禅僧の来日とともに数多くの宋元時代の書画があり、当時の書院や茶室において、日本人の趣味にもとづく新たな鑑賞法や価値観を生み出しました。
次に明治以降になると、新たに中国本来の文人趣味を理想とする優れた作品が陳介祺や羅振玉らによって持ち込まれました。これらの名品は中国伝世の歴代書画の精品とともに、中国の書画の神髄を示していますが、これらの文人志向の作品は関西独自の文化的な土壌とマッチし、中国書画は関西の経済人や愛好家による旺盛な蒐集を大いに刺激しました。
  それら関西におけるコレクションを大別すると、
一、上野理一、阿部房次郎、山本悌次郎、黒川幸七、藤井善助らのコレクションのように宋元明清の時代全般に亘るもの
二、住友春翠、大和文華館庫のように、宋元明清の全般と、例外的に江戸以前の舶載品を収集したもの
三、住友寛一や橋本末吉のように明清時代に特化して専門的に収集したもの
四、須磨彌吉郎、原田観峰、林宗毅コレクションのように近現代に特化して専門的に収集したものの
と、この4つのグループに分類されます。
 次号ではこれらの名品が、新たなスタイルの流通によって変化してきた模様についてお話ししたいともいます。
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