中国古代玉-2

更新日:2019年10月15日
宋代〜清朝までの古玉
 後漢の許慎の『説文解字』卷一に,
  玉、石之美有五徳者。潤澤以温、仁之方也。
  思理自外可以知中、義之方也。其舒揚専以
  遠聞、智之方也。不撓而折、勇之方也。鋭
  廉而不忮、渠V方也。
とあり、玉の美しさを、仁、義、智、勇、汲フ五徳であると説いています。
 また『説文解字』玉部に収められている漢字は延べ143字あるのですが、その約半数が「玉」か「玉器」に関する名称です。しかし「玉」字は時代が変わると美しいもの、高貴なものという認識とは別の意味に変貌しました。東周時代には「徳」が付され、漢代になると「避邪」が、さらに不老不死の「仙薬」にもなりました。「玉」字は表現にも表れ、玉食は美食、玉音は皇帝の言葉、玉影は月、玉人は美人、玉膚は美肌、玉友は酒…と、
 また『詩経』に、
  乃生男子、載寝之牀、載衣之裳、載弄之璋
  乃生女子、載寝之地、載衣之裼、載弄之瓦
とあり、生まれた子供が男子なら寝台に寝かせ、袴を着せ、璋の玉を持たせ、女子なら大地に寝かせ、産着を着せ、糸巻きを持たせよとあります。
 ここから男子が生まれる意に「弄璋」が、女子が生まれる意に「弄瓦」という言葉が生まれました。白川静説によると、玉は祭祀や神仙術に使われたことから、男児に玉器を与えて魂に活力を得、悪霊退散や護身を目的としたとされています。
 さて、玉製品には明器(副葬品)として遺体とともに埋葬されたものもあります。古代中国では玉には不老不死の効能があると考えられていたことから、王の顔には「玉覆面」を、亡骸には玉板を金糸で編んで作った「金縷玉衣」で覆いました。そして口中には輪廻転生を願って「含蝉(玉蝉)」を、手には財産の象徴「玉豚」を握らせました。
 ここまで述べたように、中国人にとって玉とは単なる「美しいもの」を超越したものであり、中華民族が自らの精神的、社会的、それらを誇示する物として、永い歴史とともに作り上げ、そして守り続けてきた情感や理念であると言えるでしょう。
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