木版水印画-1

更新日:2020年03月01日
中国の木版水印画作業と浮世絵に見る木版作業
 木版水印画とは、別名「水印版画」とも呼ばれており、中国の伝統的な水性木版画を指します。画仙紙半切大からハガキサイズまであり、詩箋も同じように製作されています。日本の版画との決定的な違いは、用いられる紙です。
 日本の木版画の場合は比較的厚く、また浸水性が高くて柔らかい紙や和紙を使用します。日本の和紙には楮が多く含まれているため、非常にコシがあって強い材質で、浸水性よりも保水性に優れています。ですから水性木版画を擦る3時間前には紙を湿した新聞紙に挟んで湿らせておく必要があります。そして紙が厚くて繊維が長いからこそ、馬楝(バレン)で強く摺っても破れずに強圧に耐えることが出来るのです。馬楝とは、木版や版画を摺る際に用いられる道具で、馬連、馬簾などとも表記します。
 竹皮などで作った撚紐を渦巻を芯にして、大量の紙を重ねて漆を塗った丸皿状の馬楝あてに当て、さらに滑りを良くするためにこれを竹の皮で包んで作ります。 さらに滑りを良くするために椿油をたらして紙を痛めないようにすることもあります。
 一方、中国の木版水印画は版木に梨や棗を使用し、画仙紙を使います。そして馬楝ではなく柔らかい棕櫚(シュロ)の樹皮を束ねたようなものを使って、弱い圧力でサッと摺ります。こちらは軽く湿した程度の弱圧だと上手く摺れませんので、霧吹きなどを使用して紙を湿し、日本と同様に3時間ほど待ってから使用します。薄く浸水性の高い紙で湿すので、滲んだ感じを上手く擦り取る必要があり、水っぽい感じの仕上がりになります。そのため摺り上がりの特徴から水印版画と呼ばれるようになりました。
 次号では版画の技術が日本へ伝来し浮世絵となったこと、そして身近な話題として「北に栄宝斎、 南に朶雲軒あり」とまで言わせしめたその得意の技術、それを見破ることが出来ずに複製品を購入してしまった日本人書道家の話にも触れたいと思います。
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