隔手的金子 不如在手的銅-2

更新日:2020年11月15日
写真はまさに「隔手的金子 不如在手的銅」です
 ビジネスの世界でもよく教訓として
  「授人以魚 不如授人以魚」
という言葉が使われます。出典は「老子」という説のほかに、ユダヤ系説、東南アジア説など、いずれにしても世界中で使われている含蓄深い言葉です。その意味は、
  「人に授けるに魚を以ってするは、漁を以ってするに如かず。」
という教えで、貧しい人に魚を与えれば、その人は「その日一日」は食料に困らないけれども、魚の捕り方を教えれば、その人は一生食うに困らない。人が生きるために本当に必要なのは、物ではなく技術であるという考え方です。老子のこの言葉は、魚よりも漁、金よりも事業、そして事業よりも人であるとしています。発想は本当に素晴らしいのですが、この言葉を引用するコンサルタント、評論家やコメンテーターは無責任、口ばっかりで筆者はどうにも納得が出来ません。
 筆者がこの考えに異論があるのは、その人が「どれだけ食うに困っているか」です。餓死寸前の人にこれを教えても、もうそんな気力は残っていません。倒産寸前の経営者に経営理論を説いたところで、もう間に合いません。本当に、“今”、必要な物資を与えて急場を凌いで、その先を一緒に乗り越えて行けるよう力になってあげられるかどうかの方が大切だと思うからです。
 この考え方の根本には「空手形」があります。企業における手形取引は代金決済の主要手段で、期限付きで一定の金額の支払いを約束する二社間取引でしたが、1990年をピークに対して現在の手形交換高は一割未満と激減しています。支払者は支払有効期限内に金融機関に取立依頼をする必要があり、その期間を過ぎた手形は金融機関では取り扱ってもらえなくなり不渡りとなります。この手形を「空手形」と言います。つまり実行されない約束を意味し、「将来のお金より目の前の現金が大切」という例えです。
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