香港国家安全維持法-1

更新日:2021年07月01日
 1997年の香港返還式の模様
 香港主権移譲(所謂、香港返還)は、1997年7月1日に、155年間に亘りイギリスの植民地だった香港の主権がイギリスから中華人民共和国へ返還、移譲されました。香港返還前の1984年に英中が合意した中英共同声明では、ケ小平が提示した「一国二制度」の枠組みとして返還後50年間、つまり2047年までは香港に高度な自治を認めるほか、中国大陸にはない権利や自由を与えるというものでした。
 この約束は2014年に駐英中国大使館が「今は無効」との見解を一方的に英国側に伝え、英下院外交委員会議員団による宣言の履行状況の現地調査を「内政干渉」として香港入り自体をも中国当局は拒否したのです。その後、一国二制度のもと、主権は中国、経済は従来通りの資本主義経済で香港は繁栄し、現在に至っています。なお、ポルトガル領であったマカオでも返還の声が高まり、2年後の1997年にマカオ返還が実現しました。
 話は戻りますが、香港返還時に制定された香港の憲法「香港基本法」では、幾つか重要な条項が未完のままでした。1つ目は普通選挙権(実施されていない)を認める条項で、二つ目は反逆や国家分裂、スパイ行為など国家の安全にかかわる犯罪を法的に禁止する条項でした。
 現在、中国政府が強硬に押し進めているのが香港での反政府的運動を取り締まる「香港国家安全維持法」案で、香港市民の多くが反対デモや講義を繰り返しています。
 次号では、完全に無くなってしまった香港の自治権と、国際的にも孤立しつつある中国包囲網と、富裕層の動きについてお話したいと思います。
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