五月蝿-1

更新日:2023年04月01日
左から映画「ザ・フライ」、若い人は知らないでしょうが蠅取りリボン、蠅取り名人
 「五月蝿い」と書いて「うるさい」と読める人は、かなりの漢字通か僕より上の世代の方かと思われます。旧暦の5月は5月下旬から7月上旬ごろ、つまり梅雨の季節にあたります。すっきりと晴れわたる空を「五月晴れ」ともいうように、かつて旧暦の頃は梅雨の晴れ間を意味する言葉だったのです。
 他にも旧暦5月の印象を感じさせる五月雨(さみだれ)、五月躑躅(さつきつつじ)などがあります。じめじめとした旧暦の「5月」は、「蝿」も飛び始める時期だったと考えられます。梅雨の頃に活動を始める蝿は、うるさく鬱陶しいものでした。そのため「うるさい」という言葉に「五月蝿い」という漢字を当てるようになったのです。
 確かに筆者が子供の頃、ホントに蝿はたくさんいました。食事中にブ〜ンと飛んで来ては食べ物に止まり、追い払ったかと思えばまた戻ってくる。あの厚かましさ、忌ま忌ましさ、俊敏さにはホトホト参りました。
 しかもあの輩は、汚物や腐ったモノが大好きで、止まった汚い脚のまま食物に止まりますから、食中毒の原因を作りますし、伝染病の運び屋にもなりうる、世界中の嫌われ者です。
 あの清少納言[康保3年頃(966年頃)〜万寿2年頃(1025年頃)]でさえ「枕草子」で蝿について、
  「蝿こそ、にくきもののうちに入れつ
   べく、愛敬なきものはあれ」
と述べていて、ハエは古代より天下の嫌われ者です。
 次号では天下の嫌われ者であるハエ退治の特許で大儲けしたハエ取り名人の話と、「落筆点蠅」についてお話しします。
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