紙馬-1

更新日:2023年07月01日
筆者が唯一所有する紙馬

 以前、本誌に中国伝統的民間絵画芸術の一つ「年画」について書きました。年画とは家の門扉や室内の壁面などに貼られた絵のことですが、写真は、弊社事務所内の鬼門に向けて貼っている「紙馬」で、昔、新宿の中国料理店店主からいただいたもので、当時は「神馬」に関する知識がなく、そんなに興味を持たなかったのですが、恐らくお寺が作ったと思われる素朴でヘタ上手的なデザインが気になっていました。
 紙馬とは、中国の伝統的な民間祭祀に使われる神像を、黄色、白色、その他、彩色された紙に印刷した木刻白黒版画のことです。よく似ていますが、微妙に違うんですよね。
 紙馬は宋代以降、民間において盛んになったのですが、神仏が乗馬している様子が描かれているので、神像絵「紙馬」と呼ばれています。かつて北京、無錫、蘇州などの都市では神像画を版刻した「紙馬鋪」という工房を備えた店があり、庶民の祭祀などの需要に応えていました。

 1147年に南宋・孟元老(生卒年不詳)が著した回想録『東京夢華録』では北宋の都、開封の市民生活を回顧し詳細に描いた貴重な風俗志でもあります。東京とは当時の開封の正式名称「東京開封府」のことです。北宋代の開封には通行制限がなく、盛り場「瓦子」では昼夜を問わず飲食店、商店、劇場などの店があり、大道芸が行われるなど、多くの市民が都市生活を謳歌し、繁栄を極めた様子が窺えます。
 次号では紙馬の役割と豊富な種類について、さらに文革以降、ますます盛んに作られている新しい紙馬版画についてご紹介したいと思います。

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