伝国璽-2

更新日:2024年03月15日
香港サザビーズで史上最高額で落札された康熙帝玉璽「敬天勤民」
 伝国璽は魏、西晋、前趙、後趙、冉魏、東晋、南朝六国に代々伝えられ、さらに隋、唐と受け継がれましたが、五代十国時代の946年、遼の太宗が行った三度目の開封攻略で陥落した際に紛失し以降は行方不明となりました。ところが『元史』楊桓伝には、一時期紛失していた伝国璽が見つかり、そこには「受天之命 既寿永昌」と刻されていたと記されています。
 このように本物の伝国璽が失われた時機には諸説あるのですが、少なくとも元代までは特別な神器として伝わっていたと思われます。以降の歴代王朝は皇帝の証として伝国璽は必須だったようで、漢代の玉璽を複製したとされています。
 この事実は倭国でも知りえたはずで、印章ではなく勾玉(八尺瓊勾玉)が天皇家継承の証として作られました。その元代の伝国璽は清朝滅亡後、袁世凱から中華民国蒋介石に渡りますが、国共内戦で中国大陸を追われた蒋介石によって持ち去られ、現在は台湾故宮博物院に所蔵されています。
 さて、筆者のブログでもご紹介したのですが、2016年に香港コンベンション&エキシビションセンターで4月6日に開催された香港サザビーズの2016春季オークションにおいて、清朝が最盛期を迎えた時代の第四代皇帝、康熙帝の「玉璽」が出品されました。
 この玉璽は、白檀製で紐は獣、印文は九畳篆で「敬天勤民」と刻されています。オークション開始価格は5,000万香港ドル(約7億2,794万円)からでしたが、印章の落札価格としては史上最高額の9,260万香港ドル(約12億9,360万円)で落札されました。
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