●蒋介石の公式肖像と1931年10月27日の東京日日新聞
支那またはシナとは、中国またはその一部の地域に対して用いられる地理的呼称、または王朝・政権の名を超えた通史的な呼称の一つです。支那はChina(チャイナ)の日本語表記として、日本では江戸時代中期から一般的に用いられていました。決して蔑称ではなかったのですが、第二次世界大戦中に日本が「支那事変」と言ったり、「暴戻(ぼうれい)支那ヲ膺懲(ようちょう)ス」などと使い、一般人にも戦争中に支那、支那人を蔑称として使い、国民も差別的意味合を意識するようになったため、現在では禁句となっています。それでも意図的に中国を「支那」や「シナ」と言う人たちがいますが、戦時中に日本が中国を蔑視して使っていたことを知れば、当時の歴史的名辞として用いない限り、安易に使うべき言葉ではありません。
余談ですが、中国政府の強い要請を受けて、1930年10月閣議において、中国の正式呼称を従来の「支那」から「中華民国」へと変更することが決定されています。第二次世界大戦の戦勝国になると、蒋介石[1887年10月31日〈光緒13年9月15日〉〜1975年〈民国64年〉4月5日]は「今後は我が国を中華民国と呼び、略称は中国とするよう」通告し、1946年(昭和21)6月13日公表の外務次官通達「支那の呼称を避けることに関する件」の外務省総務局長通達を公告しました。国家としての『中国』は1912年1月に建国された『中華民国』が初めてです。しかし、その中華民国を一九四九年に誕生した中華人民共和国は台湾に追放して大陸政権を奪ったので、国家としては全く違う国というのが筆者の見識です。
次号では日本人の「支那」と「満州」いう単語の感覚、少しセンシティブな内容となりますが、是非、お読みくださいませ。