代悲白頭翁- 2

更新日:2017年01月15日
桜のつぼみを見ると「代悲白頭翁」を思い浮かべる筆者です。
 劉希夷の最も有名な詩は「代悲白頭翁(白頭を悲しむ翁になり代わって)」で、この詩は「洛陽城東、桃李の花」で始まる全26句の七言古詩ですが、続く
  年年歳歳花相似  年年歳歳花相似たり、
  歳歳年年人不同 歳歳年年人同じからず 
が最もよく知られています。
毎年、咲く花は変わらないが、毎年、花を見る人の姿は変わっていく。つまり、変わりやすい人の世に比べ、変わらない自然の例えを詠んでいます。この詩を発表前に聞いた母方の親戚にあたる宋之問(656年?〜712年あるいは713年)は、非常に気に入って詩を譲るよう頼みましたが、劉希夷はこれを断わり、その結果、宋之問の下僕によって暗殺されたという説があるほどです。『舊唐書・列傳・文苑中・喬知之弟』に、
  汝州人劉希夷、………志行不修、為姦人所殺。
とあり、志行不修(操行が悪い)ことから、暗殺されたことは事実のようです。享年二八歳という若さでこの世を去ったのですが、晩年を老いと病いのなか放浪し、舟中でこの世を去った詩聖・杜甫とは全く対局の人生と言えるでしょう。
 題名の「白頭を悲しむ翁に代わって」の「代わって」の意味は、老いの境地にはほど遠い作者が、老人に代わって詠んだからですが、この若さで「人生は儚いもの」と詠嘆したのでしょうか。いずれにせよ、「代悲白頭翁」は健康に資すことを願い引用する古詩の代表作で、「花=自然界、営みは不変」と「人=人間界、営みは容易に変遷していく」を説いています。
 本誌読者のみなさまが、今年も健康に留意され、恙なくお過ごしになりますようご祈念申し上げます。
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