たとえ

更新日:2017年12月01日
これです。
 最近、バラエティー番組などを見ていると、出演者の話している内容を、わざわざテロップ(字幕)で流すことが多くなっていると感じています。聴覚障害への配慮であればいいことなのかもしれませんが、それなら識字障害者もいますから、本来は手話も必要だと思いますが、どうもそうではなさそうです。字幕によって笑いが倍増できると錯覚しているのか、大字であったり、色を変えたり、これでもかと強調された字幕が多く、嫌でも目に飛び込んでくるのと、生来のイチャモン性格のせいか、ついつい誤字を探してしまいます。
 最近、その字幕で発見したのが、「たとえる」の誤った使い方です。その字幕は「〇〇を動物に例えると…」と、他の事物にたとえる場合に「例える」と表記していたのですが、この場合は「譬える」、もしくは「喩える」でないといけません。「えっ?」と思った方、「例える」と思った方、早速、辞書を引いてください。広辞苑第六版では、譲歩表現の「たとえ」の漢字表記は「縦え、仮令、縦令」で、解説には「タトイの転」とあります。携帯で調べても、常用漢字にはしっかりと「譬([音]ヒ[訓]たとえ)」も「喩([音]ユ[訓]たとえ)」と出てきます。よって、わざわざ「例え」と誤った漢字で書かなくても、ひらがな表記にすればいいのです。「誤用の常用」の時代が来れば、置き換え文字として「譬え」「喩え」が「例え」になる日が訪れることでしょう。
 いつもの脱線ですが、苦難が予想される境遇の喩えに用いられる、
  「たとえ火の中、水の中」
の「たとえ」は「かりに、もしも」の意に使われますが、この「たとえ(たとへ)」は「たとい」の音変化です。
 次号では日本に伝わった中国の六種「六義」が元となり、五代将軍・徳川綱吉の時代に作られた回廊式庭園を「六義園」の話題に飛びます。お楽しみに。
←前へ 目次 次へ→