印泥-1

更新日:2018年07月01日
左から上海耘萍工芸品有限公司外観と李耘萍女史

 最近、中国で買って来た印泥の質がよくないと聞きます。とくに一般的なお土産物屋で買うような印泥は、色がさえないうえに柔らかすぎたり、劣化退色していたり、すぐに油が分離してしまうものもあるようです。
 美術品蒐集家は、美術品、古美術品の品質を非常に重視します。作品内容はもちろんですが、作品に用いられた材料や使い方、表具表装は立派かどうかまでも気に掛けます。何年か収蔵した経年によるものではなく、そもそも材料の悪さから劣化が激しくなると思われるような作品は収蔵する価値が無いに等しいし、その作家の評価すら認められないと言えるでしょう。また、太陽光線や蛍光灯の近くに長年、展示されれば紫外線の影響で悪い印泥はたちまち劣化してしまいます。今号では、昨年、印泥工場を見学した経験から印泥についてお話したいと思います。
 上海市黄浦区にある上海耘萍工藝品有限公司を訪ねたのですが、ここは西★印社「式熊印泥」の直営店で、書道関係者なら誰しも知っている印泥である「潜泉印泥」、「張魯庵印泥」、ともに第三代伝承人(大師)である李耘萍(1943年〜)女史が、「石泉印泥廠」の工場長だった2001年末に式熊印泥の製造に成功したことをきっかけに上海石泉印泥廠から独立し、「上海耘萍工芸品有限公司」を設立、引き続き印泥「式熊」「高式熊」を生産、経営しています。
 次号では北京の皇帝御用達で、印泥製作の名人と言われた徐正庵と庵、西★印社の張魯庵を対峙させて「南張北徐」とまで呼ばれた張魯庵の後継者、李耘萍女史との交流についても触れておきます。

 ★(作字)…さんずい+令

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