象牙藝術-1

更新日:2018年10月01日
横行する密漁によって無残に殺されたアフリカ象と象牙原木
 地球に住む我々人類にとって、野生動植物は生態系構成要素であるだけでなく、人類の生活にとって欠かすことの出来ないものとして共存共栄し、時には利用してきました。人類は持続可能範囲で、野生動植物を絶滅危機に陥れることなく、その恩恵を受けながらも、将来に引き継ぐ責任があるといっても過言ではありません。この考えは地球環境の悪化に対する国際的関心が高まった一九六〇年代後半より広がりを見せ、1972年には国連人間環境会議において野生動植物保護を目指す条約の必要性として提案され、「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシント条約)」として翌1973年、アメリカのワシントンD.C.において採択されました。我が国は1980年から締約国になっています。
 しかし、象牙は古くから密度が高く切削加工しやすい素材として珍重されました。古くは欧米や中国において、歴史的建造物、家具、楽器、身の回りの装飾品や彫刻として珍重され、我が国においても、根付、印籠、櫛、箸などの生活日用品や和楽器、近代では印章、アクセサリー、彫刻品などに加工されてきました。そのため1980年代になるとアフリカ象の個体数の大幅減少が報告され、ついに1989年に附属書Tに掲載されたため、全ての個体群について国際的商取引が禁止されることが決定し 、以降、アフリカゾウ象牙の国際的商取引は原則禁止されています。象牙の国際取引は上記の通り禁止されましたが、その後も密猟は横行し、近年その件数はさらに増していました。
 次号では、実際の中国における未加工象牙の取引量、そして中国が国内の象牙取引と加工の全面禁止措置を取ることによる大きな変化について、また象牙藝術と呼ばれる名品の紹介をしたいと思います。
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