李斯-1
更新日:2025年07月01日
●弊社刊『★齋蔵詔版集成』
秦の始皇帝(紀元前二五九年二月一八日〜紀元前二一〇年九月一〇日)は前二二一年に戦国の六雄を各個撃破して天下を手中に収め、中央集権制をしき諸制度の改革を断行しました。文字は大篆を簡略化して小篆、つまり篆書となり標準書体が成立しました。ここに文字発生以来、自然成長的に演変した文字を、宰相の李斯(?〜紀元前208年)らが省改した公用文字が出来上がったのです。有名な秦刻石(泰山・瑯★台など)は七石存在しましたがその数は少なく、ほかに小篆を代表するものは刻符、権量、詔版です。この詔版は我が国では出版履歴が無く、学書の対象として刊行するべく、陳介祺が蒐集した詔版拓本一〇種冊貢を編集作業中です。
本年一月、刊行の『★齋蔵詔版集成』は、その流布が極めて少なく、恐らく我国に伝来するものは本冊のみと思われます。刻石、虎符のような謹厳そのものの書風とは異なり、その容姿は多様で、これは鑿銘(切削、彫刻などによる銘文)によるものだからです。詔版の「小篆の典型」から外れたような自由で簡略なスタイルは、後の漢隷に連続する段階を示す貴重な遺例であり、この影印を江湖に紹介したいと思います。
連日、大盛況の大阪・関西万博の中国パビリオンでは二世皇帝の詔版が展示されていて本当に驚きました。こんなマニアックな文物(レプリカ)をよくチョイスしたなと思っています。本物と見間違うレベルの高さです。是非、みなさんも見に行っていただければと思います。
次号では始皇帝の命を受け、小篆を考案した宰相・李斯についてご紹介します。