紅星牌と公私合営-2

更新日:2019年12月15日
紅星牌本画宣紙(左は1965年製公私合営)、それぞれの商品カードと星マーク
 このように歴代紅星牌宣紙廠の旧経営陣は紅星牌伝統の品質と工程の管理を厳密に守り、紅星牌の高品質を継承してきましたが、1990年代後半に起こった勢力争いに敗れ、新経営陣に迎合したごく一部を除く旧経営陣全員が追放されてしまいました。そして新経営陣に変わるや否や、短期間のうちに「経営の効率化」を謳い文句に利潤追求を目指す経営に方向転換しました。紅星牌本画宣紙の品質は、生産効率アップと原価を下げることを目的に原材料が悪化、さらに工程の簡素化を推し進めたため、文革を機に品質劣化(紙質硬化)したと言われるようになりました。
 文革後の「紅星牌」印は円周に星がくっ付いた「星マーク」となりました。このマークによって文革前後の見分けが出来ます。それほど大切な紅星牌ブランド「星マーク」であった版権所有者である中国宣紙集団公司は、韓国の金氏によって日本における商標登録を奪われ、1998年10月以降、「紅星牌」印の商品を輸出出来なくなりました。今は解決して日本へも輸出されるようになっていますが、それでも中国の骨董店で古くて品質の良い頃の紅星牌を探すのは不可能になっています。
 さて、書道家が自分の思うような書表現をするためには、使用する紙の大きさ、厚み、紙質などを理解する必要があります。「単宣」とは1枚漉き宣紙で薄く白い単層紙、「重単宣」は宣紙より厚く漉いた単層紙、「夾宣」とは宣紙を重ね漉いた、単宣の倍の厚みのある紙です。因みに、「二層夾宣」とは2枚重ねの厚い宣紙、「三層夾宣」とは3枚重ねの厚い宣紙のことです。また紙質に関しては、「棉料」は青檀皮と稲藁の割合が3対7、稲藁が多いため浄皮に比べニジミが多い。きめが細かく、美しいにじみを出すことが出来ます。「浄皮」は青檀皮と稲藁の割合が4対6、棉料に比べて滲みが少なく薄くて丈夫です。紙が厚ければ墨が紙に深く浸透し力強い線を表現出来る反面、墨のよく吸うため筆の動きが重くなります。墨量も多く必要となり、渇筆の出やすい線となります。逆に薄い紙であれば、墨が紙の裏まで到達するため、筆の動きのある切れ味鋭い線を表現しやすくなります。
 旧来の同品質に比較して硬い紙質は撥墨の著しい低下に直結し、宣紙という紙種の人気急落になったことは多くの実作者に実感されており、より良い品質で展覧会発表作品の助となる紙を自作する作家も増えてきています。
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