堆朱-2

更新日:2020年12月15日
江戸時代、18世紀の堆朱楊成作『松竹梅堆朱盆(東京国立博物館蔵)』
 日中間では表面の色によって呼び名が変わります。表面が朱であると日本では「堆朱」、中国では「剔紅」、表面が黒であると日本では「堆黒(ついこく)」、中国では「剔黒」と呼びます。ほかに「剔黄」、「剔緑」など、各色の漆の彩色を彫り込んだ彫彩漆などがあります。漆は硬いので彫刻が困難ですが、油と混ぜて軟らかくしてから表現方法が広がり、様々な繊細彫刻が施された芸術品を生み出しました。余談ですが、最古の堆朱遺品はイギリスの探検家スタインが新疆ウイグル自治区ミーランで発見した、「革製鎧小札(大英博物館蔵)」が有名です。
  近年、中国の漆芸に対する関心は世界的にも飛躍的に高まり、その研究も進められています。現在では漆工品というと、彫漆の天目台やお盆など、日常的にお茶を嗜む方々には格式高い道具として知られていますが、茶器、花台、菓子器、文房緒具、盆など、微細彫刻の古美術品になるとウン百万円を超えるような価値のある芸術品も見掛けられます。そうなると当然のことながら、プラスチック製など精巧に作られた偽物が出てくるんですよねぇ。
 まずは直観が大切ですが、堆朱が厚く塗りあげられ、彫刻の文様が細かいものを選ぶべきでしょう。それでもプロの鑑定師が騙されるほどレベルの高い贋物も出回っていますから、ご興味のお有りになる方は本物をたくさん見て、くれぐれも粗悪品をつかまされないようお気を付けくださいませ。
←前へ 目次 次へ→