鍾馗(しょうき)-1

更新日:2021年05月01日
戴進(1388年〜1462年)画『鍾馗出山図(北京故宮博物院藏)』 と京町家で見られる瓦鍾馗
 みなさんは長い髭を蓄え、中国の官人の衣装を着て剣を持ち、大きな眼で何かを睨みつけている「鍾馗図」をご覧になったことがありますでしょうか。鍾馗については諸説あるのですが、中国民間伝承による道教系の神様を指します。
 また、鍾馗の図像は魔除けの効験があるとされ、日本でも旗、屏風、掛け軸として飾ったり、京都の祇園、宮川町、上七軒など花街の屋根の上に瓦鍾馗を飾ったりしています。この理由には、鍾馗は「商気」、「商機」に繋がるとし、商売繁盛の神様として信仰する考えもあるようです。
 唐代に実在した人物とする逸話は、陳耀文(1573〜1619)が明・万暦23 年(1595)に編纂した類書「天中記」全59巻(後に増補して60巻)に残されています。この巻四「唐逸史」に唐六代皇帝玄宗の夢に鍾馗があらわれる下りがあり、
  「………俄見一大鬼頂破帽衣藍袍、
  繋角帯★(革+及)朝靴、 徑捉
  鬼先刳其目、然後劈而啖之。上
  問大者、 爾何人也、奏云、臣
  終南山進士鍾馗也。因武徳 中
  応挙不捷、羞帰故里、触殿階而
  死。是時奉旨 賜緑袍以葬之。」
とあります。
 次号では、「天中記」巻四「唐逸史」の要約を通して玄宗皇帝が鍾馗図を書かせた経緯、経緯不明ですが日本に伝わったことについても書きたいと思います。
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