上医医国-2

更新日:2021年08月15日
孫思★『千金方全30巻』巻一「診候」

 現代ならコロナの特効薬を開発しても、たかが中医であり、知識人は政治家であると同時に、儒学の教えとして親孝行のために医療の心得が当然だったため、こうした格言は政治家向けの含蓄深いものとなっていたようです。この考えを発展させるため、この格言を転録して著したと思われる人がいます。
 それは唐代の孫思★(そんしばく:581?〜682)で、彼は隋や唐の皇帝にたびたび誘われたものの仕官を嫌い、山奥に隠居した名医、道士です。彼が唐代652年に著した『千金方全30巻』巻一「診候」には、「上医医国、中医医人、下医医病」という一文があります。上医は国を治す能力があり、中医は人を治すことが出来、下医は病気しか治せないと説いたのです。国を治す医者とは、どんなお医者さんなんでしょうか。
 中国伝統医学は、陰陽、五行、天人合一といった古代の自然哲学、理論を基礎とした医学体系で、中国各地に自然発生的に起こった医療技術と結びつけて確立させたものをいいます。 漢代に書かれた古理論『 黄帝内経』がベースとなっており、その根本原理が「陰陽五行説」というものです。
 この「陰陽五行説」とは、人の身体に当てはまるだけではなく、この世の万物に共通する世界観ですので、東洋医学だけではなく東洋哲学の根幹思想です。故に陰陽と五行の理論から、の万事万物の変化を認識でき、国家の政治、生命現象、病気の原理も認識できます。したがって、医者でありながら、国の「病気」を治すことも理解できます。このような上等の医者になるためには、医薬の知識に精通する以外に、天文、地理、歴史、四書五経、養生、修煉、算数、占いなどの知識も必要となるのです。気が遠くなるほどの勉強が必要だったんですね。
 こうして考えてみますと、今言われているメタボは殆ど生活習慣病ですから、食生活や日頃の運動を含めた日常生活そのものが大変重要になります。つまり病気は自分自身で作り出していると言っても過言ではりません。自分自身が「上医」の意識を持って日常生活を注意深く過ごすと、未病のうちに病を治し、文字通り医者知らずとなることでしょう。

★…貌にしんにょう

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