老饕蘇軾(食いしん坊の蘇軾)-1

更新日:2022年03月01日
黄州寒食詩巻黄山谷跋、引首「雪堂餘韻」は乾隆帝揮毫。
 中国古来の数多の文人で、この人ほど老饕(食いしん坊)を自認した人はいないでしょう。その人は北宋時代の蘇軾(1036〜1101)で、兎に角、彼の詩には「食猪肉詩」を筆頭に食べ物、飲み物が数多く登場する上に、自らの名前を冠にした料理が相当あり、他の追随を許しません。
 例を挙げると、最も有名な豚の角煮「東坡肉」を始め、長江中流域の鯉料理「東坡魚」、イカ料理「東坡墨魚」、揚げ豆腐「東坡豆腐」、四川肘肉料理「東坡肘子」、広東省の銘物料理「東坡腿」、湖北省の名物点心「東坡餅」、他にも「東坡酥」、「東坡狗肉」、「東坡腿」、「東坡羹」、「東坡脯」などがあります。
 蘇軾は名を蘇軾、字は子瞻、眉州(現・四川省眉山市)に生まれ、科挙は二二歳の時に「進士」に合格して政界に参加しましたが、44歳の時には国政誹謗の罪を着せられて逮捕され、黄州へ左遷させられました。経済的にも困窮した蘇軾は自ら鍬で荒地を開墾し、この地を「東坡」と名付け、自らも東坡居士と号したのです。
 その後、50歳になり中央官界に復帰、中書舎人、翰林学士を経て礼部尚書まで登り詰めますが、経済政策や教育政策に反対したことから新法派によってまたもや追放の憂き目に遭います。59歳で恵州に、62歳で海南島まで追放されたのです。しかしこの二度の流罪を乗り越え聡明な人生哲学を築き上げたことで彼の最大傑作「赤壁賦」が生まれたのです。
 次号では、蘇軾の代表作『行書黄州寒食詩巻』を通して蘇軾と彼の弟子でもあり友人でもある黄庭堅との好対照な一面についてお話したいと思います。
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