君子豹変、小人革面-1

更新日:2023年05月01日
五経「易経」明治時代木版版本
 この成句の出典は、儒学で尊重される五部の経書『易経』で、陰と陽の印を組み合わせた六十四卦によって自然と人生の変化の道理を説いた書です。
 原文をたどると、「君子豹変、小人革面」とあり、立派な人物は、自分が誤っていると分かれば、豹の皮が季節によって抜け変わり、斑紋が黒黄のように目立つことから転じて、心を入れ変え、行動でも変化がみられるようになるという意です。反対に、つまらぬ人間は、表面上は変えたようでも、内容は全く変わっていない」という内容となっています。実は「君子豹変」の前には「大人虎変」があり、大人は革命の当事者で、虎のように堂々と出てくるという意味です。大人〉君主〉小人の順になります。
 現代ではやや勝手な解釈として「融通無碍」に変節したり、前言を翻した場合にこの格言を濫用しています。つまり「君子豹変」は「すぐにがらりと意見や態度を変える」という無節操ぶりを指摘するようなネガティブ的な使われ方が多く見受けられます。
 しかし「君子豹変」とは、本来は「徳の高い立派な人は、間違いに気がついたらすぐに態度をきっぱりと改める」という意味のポジティブな言葉です。同様にネガティブな意味合いを持つ四字熟語に「朝令暮改」があります。出典は『漢書・食貨志』の鼂錯の「説文帝令民入粟受爵文」にありますが、指示や命令や方針などが、ころころ変わって一定しないことを意味します。
 今日の「君子豹変」の誤った解釈は、「朝令暮改」と混同された解釈なのかもしれませんが、要するに「君子豹変」は良い方向に進歩向上することを意味します。例えば政治の世界でよくある、初めは「賛成」しておきながら態度を一転して「反対」 に変えたり、その逆がよくある例です。
 政治家の変節とは、「選挙や支持率を鑑み、いかに政治家としての身分を守り、党の立場を守り、金や権力など私利私欲を維持するか」のために行われるものであり、はっきり言えば「小人革面」です。「最終的かつ不可逆的な解決」を国家間で約束したにも関わらず、平気で合意違反する何処かの国の大統領も「小人革面」と言えるでしょう。
 次号では偉人たちの解釈の違いや、現代社会に当てはめて考えてみました。お楽しみに。
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