素養と教養-1

更新日:2023年10月01日
四書五経(国立公文書館蔵)
 よくあの人は素養があるとか、教養が高いなどと言います。素養と教養はどう違うのかを明確に答えられる人は教養が高い人です。まず「素養」とは、普段の練習や学習により身につけた力や知識、心得(こころえ)を指します。ある分野のことが上手く出来る生まれ持った能力「才能」ではなく、後天的に身につけた意味から、「資質」や「素質」とも違います。「教養」とは、学問や精神など幅広い知識を身につけることを指し、知識から養われる「心の豊かさ」を意味します。ですから素養も教養もどちらも後々身につけるものですが、その意味合いは微妙に違います。
 つまり、「素養があってこそ知識や学問を得ることが出来、教養が育って心の豊かさが得られる」ということでしょう。中国では科挙の権威を軸とし、四書五経を学ぶこと、そして漢詩に通じることが教養とされてきました。日本でも古代中国の影響を強く受けたため、四書五経や漢詩は伝統的に重要視されてきました。
 それに日本独自の諸文芸や和歌が同様に重要視されました。文人画など絵画を自ら描くことも教養の一部としています。このように、古典に通じ、ハイカルチャーを身につけることが伝統的な教養における重要な要素であり、いずれも人格向上の一助とされてきました。
 次号、江戸時代の三種の神器は「読み・書き・そろばん」でしたが、同じ「書き」でも現在とは大違いで、漢学を修めることが必須でした。書道は永らく教養人に書かせない素養で、達筆であることに加えて基礎練習の繰り返しによる精神鍛錬も求められましたそうで、少しご紹介したいと思います。
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