玉蝉-2

更新日:2025年05月15日
翠玉白菜(台北故宮博物院蔵)

●翠玉白菜(台北故宮博物院蔵)

 また、納棺に際しては「蘇生と再生」を願って口中に玉蝉を入れ、食物に困らないよう猪(豚)の「玉豚」を握らせ、衣服に困らないように蚕の衣服を被せたのです。中国人の死生観を考えるに、道教の「不老長寿」、仏教の「輪廻転生」がありますが、基本的には儒教の「招魂再生」が挙げられます。中国では魂に対して死体を漢字で白偏に鬼「魄(はく)」と書きます。つまり、死とはこの魂と魄が分離した状態を言います。

 後世になり輪廻転生信仰は現実的ではないと判明した後でも、これらの習慣は長く続きました。素材は玉や翡翠に彫刻したものが多く、非常にモダンなデザインになっています。最も優れた玉の芸術品「翠玉白菜(台北故宮博物院蔵)」は半分が緑、半分が白の翡翠で、それを上手く利用して、白菜の形に彫られています。緑の葉の部分には螽斯(キリギリスまたはイナゴ)が数匹います。繁殖力が旺盛な螽斯は子孫繁栄の象徴です。この玉は清朝末期に光緒帝に嫁いだ瑾妃の持参品で、葉の色「青白」は「清白=花嫁の純潔」に通じ、光緒帝はこの翠玉白菜を「清々白々(高潔な人格の意味、清廷の清は野菜を意味する青と同音)」と呼んで手元の愛玩にしたそうです。

 2014年に東京国立博物館特別展「台北 國立故宮博物院−神品至宝−」が開催され、「翠玉白菜」と「肉形石」が期間限定で特別展観され大人気でしたが、筆者は待望の蘇軾「行書黄州寒食詩巻」を観に行ったのですが、ガラスケース前はガラガラで、思いもよらず時間を掛けてじっくりと鑑賞することが出来ました。

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