義姉妹-1

更新日:2017年05月01日
蘇州といえばこの景色です。

 中国で最も強い人的繋がりと言えば「血」、つまり血縁です。「一人っ子政策」により、中国では兄弟姉妹のいない人が、「弟」や「妹」と表現することがありますが、よく聞けば多くは従兄弟であったりするのは、日本の核家族化社会で増えた一人っ子たちとは違った感覚になります。
 もう一つ、義兄弟というのがありますが、これは血縁がない人同士が兄弟のような関係を契ることです。義兄弟の歴史は史書によると漢代まで遡ることができるそうで、中国文学にも多く現れます。最も有名な『三国演義』における「桃園の誓い」では、劉備・関羽・張飛三人が固い絆を持つ義兄弟の深い関係を契りました。中国では義兄弟、義子の盟を結ぶという風習が古くからあり、他に姉妹関係、そして「義姉妹」もあります。
 女性同士で「義姉妹」の関係を契るという話があります。嘉慶13(1808)年頃、清の沈復(しんふく:1763〜1825) が著した随筆風自叙伝に「浮生六記」にあるのですが、実は光緒3年(1877)に蘇州の大道露店で発見されたときは作者手稿のままだったそうです。
 作者の沈復は科挙試験を受けず、父親・沈稼夫(稼夫公)の家業でもあった正規官吏の私設秘書「幕僚」という職につきました。見知らぬ土地の県知事に任命された官僚にとって、「郷紳」と呼ばれる土着の事情に精通した有力読書人階級の幕僚、幕友は大変、有り難い存在で、後任の知事にも再び採用されたようで、そのため沈復は転任を繰りかえしながら中国各地を旅したようです。
 次号では倹約生活を過ごした沈復と、その亡き妻、陳芸が★と結んだ「義姉妹」のエピソードについてご紹介します。

★…「敢」の下に「心」

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