都合-1

更新日:2020年06月01日
魏文帝(閻立本筆、ボストン美術館蔵)
 日本人は「都」という漢字を見ると、恐らく殆どの人が音読み「と」か、訓読み「みやこ」と読むと思います。しかし、この他の意味はと聞かれると即座に答えられる人はそう多くはいないでしょう。しかし中国語を理解出来る人なら、「都」は「すべて」という意味だとご存知です。つまり、「都」は助字、または虚字の「すべて」という意味に使われています。今号の「都合」は中国人と筆談で使っても間違いなく通じない単語の一つです。
 もし相手のご都合を確認するなら、
  「★(人偏+尓)方便★(口編+馬)?」
という具合に、「都合」という単語ではなく、「方便」を使わなくてはありません。
 中国の歴史書『三国志』には、「魏」「呉」「蜀」の三国が争った時代が描かれていますが、この時期には三人の皇帝が存在しました。魏の曹丕、呉の孫権、蜀の劉備です。劉備については黄巾軍との戦いの功績、諸葛亮(孔明)との逸話で知られますが、曹丕といについてはよく知らないという方が多いと思います。
 三国志で魏といえば曹操を思い浮かべる人が多いと思いますが、彼は活躍したものの皇帝の座には就きませんでした。その息子・曹丕は長子として生まれたものの、異母兄が二人いたため三男にあたり、後継者となる望みは薄かったのですが正室・曹昂が戦死、次兄・曹鑠も病死したため魏代初代皇帝・文帝として220年〜226年の在位を勤めました。
 曹丕は、父・曹操、弟・曹植とともに後世に「三曹」と称されるほどの文人で、その多くの優れた詩は『文選』にも収められています。
 次号ではその曹丕が家臣に与えた書に見る「都」の用法、また日本での用例などを通して一般的な「都」の使い方についてお話しします。
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