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メールマガジン Vol.38 2026年2月4日発行


【本号の内容】
 「書法漢學研究」第38号のご案内
 「書法漢學研究」第38号刊行に際して −中村伸夫−
 金石過眼録  −萩 信雄−
 2つの展覧会  −近藤 茂−

「書法漢學研究」第38号のご案内
書法漢學研究第38号  
「柯九思蘭亭」・「独孤蘭亭」・「過雲楼蘭亭」比較研究(下) 増田知之
筆勢の習得と応用にみる敦煌文献中の習字蒙書(続) 玉 素甫
新発見『日塘秦刻石』―その銘文と性質について 川内佑毅
端渓硯・龍岩 橋本吉文
造像碑随想 志民和儀
「李柏に関する文書」参観記 楊 柳
初公開「新莽嘉量銘残欠」考 近藤 茂
青蓮院流および御家流書法の伝播
―資料「七十二點 并 結構」「八十一勢」解題と考察―
根本 知
ケ散木「廁簡樓金石書法講座」に関する一考察
― ?漢印屏二点を手がかりに ― 【注】
沈 伯陽
 
「書法漢學研究」第38号刊行に際して −中村伸夫−
「書法漢學研究」第38号

『書法漢学研究』第38号をお届けします。中国の研究者による論考をはじめ、充実した内容の八編が寄せられました。次号にも購読者諸氏による積極的な寄稿をお願いする次第です。

川内佑毅氏の「新発見『ガリタン秦刻石』―その銘文と性質について」は、中国の社会科学院と国家文物局が実地踏査した最新の重要史料に関する論考です。

川内図版
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秦の始皇帝が不老不死の薬を求めて、標高4300メートルもある遥か西方「崑崙」の地に高官を派遣したというのは、そのことだけでもにわかに信じがたいことです。しかし、今では青海省に属するその現場に、事実を伝える文章が岩肌に刻されていました。刻石は始皇帝が亡くなる前年(紀元前210)のものとされ、今に至る2230年ものあいだ風雨にさらされていたことになります。

論文中の挿図「銘文一覧」を見る限り、石質は「中細粒の長石石英砂岩」ということで、かなり硬質の石面に鋼鉄の刀で彫り込まれたもののようです。文字は五センチ前後ということですから、日常は書くことのない大きさの、この種の威厳を備えた文字が揮毫できる役人(あるいは彫師を兼ねたか)も、この僻遠の地に同行したにちがいありません。そのことも驚きです。

この新史料は、同種の刻石が、他の地域にも存在したことを暗示しているようにも思えます。

新嘉量銘拓本
新嘉量銘拓本
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近藤茂氏の「初公開<新莽嘉量銘残欠>考」も、興味深い稀覯史料についての紹介文です。ただ、この史料には異体の文字、あるいは誤字と思われるものも随所に見られます。材質の問題もふくめ、真偽の判別についての慎重な検討も必要でしょう。

 
 金石過眼録 −萩 信雄−
整拓三種字例
整拓三種字例
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「開通褒斜道刻石」の拓本については、Tは二玄社『書の宇宙』〈風化の美学・古隷〉所載の筆者旧蔵本で、現在は京都国立博物館の所蔵となっている。Uは同朋舎出版『漢碑集成』所載本、Vは同朋舎出版『中国石刻大観』所載本である。この刻石の拓本の新旧について知見を述べた校碑書に、A方若・王壮引『増補校碑随筆』(上海書画出版社、1981・7)34頁、B張彦生『善本碑帖録』(考古学専刊・乙種第19号、中華書局、1984・2)8頁、C馬子雲・施安昌『碑帖鑑定』(広西師範大学出版、1993・12)24頁がある。

以上の三書の記述をふまえて、重要と思われる文字の欠損状況を指摘しておく。アトランダムに取り上げると、「鉅鹿」「冶級」「廣漢」の三箇所で、まず「鉅鹿」から述べたい。これは戦国時代の趙の地で、今の河北省平郷県にあたる。この「鹿」の字を見ると、Tでは通行字からは想像も出来ないようなスタイルで、上部はあたかも「さんぼう」をひっくり返したような字形である。漢代の「鹿」字でこれと同じような字形はないかと博捜するとここでは一つ一つ取り上げないがいくらでも見つかる。

 
 2つの展覧会 −近藤 茂−
娯ツ文會書法篆刻展
娯ツ文會書法篆刻展
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昨年末に開催された本会副理事長・井谷五雲氏が2年に一度開催する「娯ツ文會書法篆刻展」を本会理事・萩信雄氏と拝見しました。特別展観「橋本海關書画展」も見応えあり、本会前理事長の大野修作氏も久しぶりに公の場に顔を出され、元気な姿を見せてくれました。

第70回現代書道二十人展
第70回現代書道二十人展
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また棋界最高峰の書家20人が腕を競う正月恒例の「第70回現代書道二十人展」には本会理事長・中村伸夫氏も出品されており、萩信雄理事とともにレセプション、翌日のギャラリートークも拝聴しました。



この度、書法漢學研究会の理事の方々に加えて、新たに編集委員として以下の4名の方にご就任いただき、斯界の振作を図り、益々の発展を期す所存です。

井後雅之 井後雅之
日本篆刻家協会常務理事
 書写教育や篆刻を中心に、文字文化について研究しております。教育現場に身を置きつつ、古典の解釈と実作の往還を重視した研究を志しております。本誌を通じ、多くを学ばせていただければ幸いです。

川内佑毅 川内佑毅(号:伯豐)
日展会友、東洋大学文学部准教授
 このたび、『書法漢学研究』編集委員を拝命いたしました。浅学非才ではございますが、書法と漢学の学際的研究が一層深まるよう、微力ながらその発展に貢献してまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

志民和儀 志民和儀
大東文化大学書道研究所 客員研究員
 この度、編集委員を拝命した志民和儀です。これまでは金石や中国書道史関係の論考を投稿させて頂きましたが、今後はこれらに加え、近代中国金石家の絵画についても執筆し、多少なりとも本紙の内容にバリエーションを持たせることに協力させて頂ければと考えています。よろしくお願いいたします。

下田章平 下田章平
相模女子大学准教授
 近年、書に関わる文章を発表できる雑誌が少なくなっている中で、本誌の刊行は大変重要な意義を持っています。書道を愛するすべての人が、立場を超えて発表し、楽しめるような雑誌となるよう、尽力したいと思います。