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『書法漢学研究』第38号をお届けします。中国の研究者による論考をはじめ、充実した内容の八編が寄せられました。次号にも購読者諸氏による積極的な寄稿をお願いする次第です。
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川内佑毅氏の「新発見『ガリタン秦刻石』―その銘文と性質について」は、中国の社会科学院と国家文物局が実地踏査した最新の重要史料に関する論考です。
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秦の始皇帝が不老不死の薬を求めて、標高4300メートルもある遥か西方「崑崙」の地に高官を派遣したというのは、そのことだけでもにわかに信じがたいことです。しかし、今では青海省に属するその現場に、事実を伝える文章が岩肌に刻されていました。刻石は始皇帝が亡くなる前年(紀元前210)のものとされ、今に至る2230年ものあいだ風雨にさらされていたことになります。
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論文中の挿図「銘文一覧」を見る限り、石質は「中細粒の長石石英砂岩」ということで、かなり硬質の石面に鋼鉄の刀で彫り込まれたもののようです。文字は五センチ前後ということですから、日常は書くことのない大きさの、この種の威厳を備えた文字が揮毫できる役人(あるいは彫師を兼ねたか)も、この僻遠の地に同行したにちがいありません。そのことも驚きです。
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この新史料は、同種の刻石が、他の地域にも存在したことを暗示しているようにも思えます。
新嘉量銘拓本
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近藤茂氏の「初公開<新莽嘉量銘残欠>考」も、興味深い稀覯史料についての紹介文です。ただ、この史料には異体の文字、あるいは誤字と思われるものも随所に見られます。材質の問題もふくめ、真偽の判別についての慎重な検討も必要でしょう。
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